サウスバンク・シンフォニア
- 選考担当: クリストファー・パッテン国際顧問
2002年に創設された、若手音楽家によるロンドンの交響楽団。毎年、32人の若手音楽家がさまざまな音楽学校からオーディションで選抜され、奨学金の補助のもと、フルタイムの楽団員として一年間の訓練を受ける。イギリスだけではなく、欧州各国やオーストラリア、ニュージーランド、日本を含むアジア各国など、海外からのメンバーが3割を占める。
一年間のうちに初期バロック音楽から現代音楽まで、交響曲、室内楽からソロ作品までの多種多様な音楽を経験できるのが特徴。
メンバーは王立歌劇場、ナショナル・シアターなどで公演し、テレビ出演も多い。毎年、イタリアのアンギアリ音楽祭にも参加、著名な指揮者との共演も多い。卒業生のほとんどがプロのオーケストラなどで活躍している。
サウスバンクは、テムズ川にかかるウォータールー橋南端の一帯を指し、ナショナル・シアターなどがある文化地域で、同楽団の事務所も、その一角に立つセント・ジョン・ウォータールー教会の地下室にある。リハーサルも教会の礼拝堂で行い、また、毎週木曜日の夕方には、この礼拝堂で「ラッシュアワー・コンサート」と銘打って、誰でも気軽に立ち寄れる無料のコンサートを開催している。
スタッフは12人で、毎年必要な資金75万ポンド(約1億円)はすべて民間の寄付で賄っている。創立10周年の来年には、フランス、イタリア、アメリカ、オーストラリアなどへのコンサート・ツアーを予定している。
ロイヤル・コート劇場若手劇作家プログラム
- 選考担当: クリストファー・パッテン国際顧問
18歳から25歳までの若手劇作家を養成するためのイギリスの名門劇場、ロイヤル・コート劇場のプログラム。「若手劇作家が作品を書くのを奨励するため、その作品を積極的に上演していく」という同劇場の方針を反映し、1991年からスタートした。
このプログラムには、3ヶ月ごと(3月、9月、12月の1日開始)に15人前後が参加。参加者は週一回、同劇場で開かれる講習会で、脚本を朗読したり、討論したり、それぞれが脚本を書いたりと、劇作家としての基礎を学ぶ。誰でも参加でき、費用は100ポンド(約13500円)。昨年夏には日本人も参加した。
2009年の演劇・映像部門の受賞者、トム・ストッパードなど有名劇作家、監督、デザイナー、振付師などを招き、話を聞く機会も設けている。
2010年に同劇場が公演した作品の半数はこのプログラムが生んだ若手劇作家のものであり、特にルーシー・プレブルの『エンロン』はウエスト・エンドに進出、ヒット作となった。
現在の同劇場は1878年にロンドンのスローン・スクエアにオープンしたが、創立以来、「劇作家のための劇場」として、若手劇作家の発掘と育成に力を注ぎ、新作を多く取り上げてきた。毎年、若手劇作家フェスティヴァルも開催、そこで上演する作品を募集しているが、今年はその対象年齢を8歳まで引き下げたという。
同劇場の文学マネジャー、クリストファー・キャンベルは「英国は他の国と比べ、劇場と劇作家の重要性が高く、文化的影響力が大きい。観劇が文化に根付いている。新しい世代の劇作家を見出し、その作品を上演することが基本的な役割」と強調している。
アジア ユース オーケストラ
- 選考担当: 中曽根康弘国際顧問
アジア ユース オーケストラ (AYO) は、日本、中国などアジア各国で長年、音楽教育者や指揮者などを務めていた米国人、リチャード・パンチャスが1987年、ヴァイオリン奏者兼指揮者の故ユーディ・メニューインと共に、香港実業界の支援で香港に設立した。 音楽を志すアジアの青少年にオーケストラで演奏する機会を提供し、有名アーティストとの共演やツアーを経験することを通じて、優秀な才能が育まれ、成長していくことを目的としている。
1990年の初回公演以来、昨年までに世界76の都市で307回の公演を行った。1997年には香港と北京で行われた香港返還式で、タン・ドゥン作曲の「交響曲1997天・地・人」の世界初演をヨーヨー・マと演奏。このほか、ニューヨーク・リンカーンセンター、ホワイトハウス、国連本部や、アムステルダムのコンセルトヘボウやベルリンのコンツェルトハウスなどでも演奏している。 20周年に当たる今年は、8月7日から28日まで、創立者兼芸術監督のパンチャスと英国の指揮者ジェームズ・ジャッドが率いて、深圳、香港、ソウル、北京、天津と、日本の佐賀、別府、京都、東京で公演を行った。
パンチャスは「一年ごとにメンバーの顔ぶれは変わるが、その熱気、情熱と意欲はいつも変わらない」と、20年間の成果を強調する。
AYOの活動資金は、シンガポール、台北、香港、中国、マレーシア、タイ、フィリピン、日本の個人や企業からの支援を受けている。卒業生は、世界各国の交響楽団などで、指揮者、室内楽奏者、あるいはソリストとして多数、活躍している。
http://www.asianyouthorchestra.com/
クレメラータ・バルティカ
- 選考担当: オットー・グラーフ=ラムスドルフ国際顧問
バルト海沿岸のバルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)のラトビア・リガ生まれの世界的ヴァイオリン奏者、ギドン・クレーメルが1997年、 「50歳の誕生祝い」として、バルト三国の優秀な若手演奏家を集めて結成。クレーメル自身がソリストと芸術監督を務め、今や、最も卓越した欧州の室内管弦 楽団の一つと称されるまでに成長した。
クレーメルは、この楽団の活動を通じ、自らの幅広い音楽経験をバルト三国の若手演奏家に伝えるとともに、旧ソ連からの独立後に高まったバルト三国の音楽・文化に対する独自の機運、帰属意識を育て、促進していく狙いも込めている。
バルト諸国のほか、世界各地を巡る年5回のツアーで計60のコンサートを開催し、様々な音楽祭にも出演。2004、07、08年の来日公演に続いて、今年11月には新プログラムを携えて名古屋、東京、大阪で公演する。
世界各地でのコンサートではクレーメルが一緒に演奏するが、ウラディーミル・アシュケナージ、サイモン・ラトル、ミッシャ・マイスキー、ヨーヨー・マら有名な指揮者やソリストとも共演している。
クレーメルは「私が強調するのは非常に単純なことで、“ありきたりの楽団”にならないことだ。楽団員にはいつも、リスクに立ち向かい、冒険し、レパートリーを広げ、真似ではなく解釈せよ、と指導している」と語る。
2002年には、『アフター・モーツァルト』のレコーディングでグラミー賞を受賞した。06年には、ザルツブルクで一晩にモーツァルトのヴァイオリン協奏曲全5曲を演奏、そのライブ録音が今年7月に発売され、話題を呼んだ。
クレーメルは「資金不足で実現できない企画も多いが、今回の奨励金で一つか二つの企画を実行できる。楽団の真髄を示す冒険的な企画にしたいと意気込みを語った。
イタリア青少年オーケストラ
- 選考担当: ランベルト・ディーニ国際顧問
ウエスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ
- 選考担当: レイモン・バール国際顧問
イスラエル人ピアニスト兼指揮者、ダニエル・バレンボイムと、パレスチナ系アメリカ人学者のエドワード・サイードが1999年、イスラエルとアラブ諸国の人々の相互理解を深めるため、双方の若手音楽家を一緒に訓練するワークショップを開催。これを基にオーケストラが結成された。2005年には、パレスチナ自治区ラマラで歴史的なコンサートを開催。スペイン・セビリアのバレンボイム・サイード財団が運営を担当。参加資格年齢は14歳から28歳。奨励金は、エジプト、シリア、イラン、イスラエルの団員の奨学金として使われた。
ベネズエラ青少年・児童オーケストラ全国制度財団
- 選考担当: ウィリアム・ルアーズ国際顧問
ベネズエラの貧困地域の子供たちをクラシック音楽の練習、演奏を通じて教育する財団で、元文化大臣のホセ・アントニオ・アブレウ博士が1975年から始めた。2歳半以上の児童・青少年25万人が参加、全国に計210のオーケストラを擁する。「音楽は不幸を希望に変え、子供を犯罪から救う」という信念の下、無償で楽器を与え、訓練する。優秀な生徒にはカラカスでの住居、生活費を提供する。奨励金は楽器購入費などに充てられた。2008年12月、傘下のシモン・ボリヴァル青少年オーケストラが来日公演を行なった。
草津夏期音楽アカデミー(日本)
- 選考担当: 中曽根康弘国際顧問
アジアの若い芸術家に世界最高レベルの音楽家から学ぶ機会を与えようと、1980年、群馬県の草津で発足。公募による受講生は台湾などアジアからも来日。毎年8月、草津国際音楽祭の期間中の2週間にわたって、世界的ソリスト、ウイーン・フィル、ベルリン・フィルなどのトップ音楽家を講師に迎えて、講習会と演奏会を開く。受講生は計6000人を越え、第一線で活躍する音楽家を多数輩出。奨励金でアジアから若手演奏家を招き、2006年、東京で記念コンサートを開催した。
中央ヨーロッパ青少年サウンド・フォーラム
- 選考担当: リヒャルト・フォン・ワイツゼッカー国際顧問
ドイツ青少年サウンド・フォーラム(2000年創設)が2003年、チェコの若手音楽家と協力して、ユダヤ人強制収用所のあったテレジンでコンサート開催したのをきっかけにスタート。これにポーランドが加わり、3カ国にまたがる組織へと発展した。参加メンバーは必要に応じて集まり、短期間に集中的な練習を行い、その後、コンサートツアーに出かける。奨励金は2005年春、ナチスに対するレジスタンス運動が展開されたポーランドのクライザウでコンサート開催などに使用された。また、同年9月には来日公演を行った。
デ・ソーノ音楽協会(イタリア)
- 選考担当: ウンベルト・アニエリ国際顧問
イタリア・ピエモンテ州の若い音楽家たちを支援しようと、芸術監督のフランチェスカ・カメラーナさんが1988年、州政府と同州の企業の協力でトリノに設立。若い音楽家に奨学金を出して支援、これまでに150人が奨学生となり、世界各地の音楽学校で研鑚を積んだ。一流オーケストラのコンサートマスターや首席奏者などを多数輩出。無料コンサート、音楽論文集や音楽家の写真集の出版も手がける。奨励金は50人以上の奨学生のヨーロッパやアメリカの留学資金に充てられた。
欧州連合青少年オーケストラ
- 選考担当: エドワード・ヒース国際顧問
欧州統合の象徴的な存在として、ヒース元英首相らの尽力で、欧州議会の承認を経て1978年に誕生。創設音楽監督はクラウディオ・アバド(2003年世界文化賞受賞者)。13歳から23歳の140人で構成される。オーディションは毎年行われ、合格者は夏休みなどを利用して、世界最高水準の指揮者から指導を受け、コンサートを行う。このオーケストラ出身者はすでに3000人を数え、その90%がプロの道に進み、欧州音楽界の中核となっている。奨励金は2003年、東ヨーロッパ諸国への親善ツアーに充てられた。
若手映画監督研修塾「レジデンス」(フランス)
- 選考担当: レイモン・バール国際顧問
カンヌ映画祭の関連団体であるパリのシネ財団を運営母体に2000年に設立。世界中の応募者から年2回、6人の若手の映画監督を選び、パリで宿舎と生活費を4ヶ月半提供する。選考はフランスの映画監督、オリヴィエ・アサイヤス氏を選考委員長に7人の映画関係者が行う。研修生は「レジデンス」で共同生活を送りながら、脚本を執筆したりプロデューサーを見つけたりと、映画制作の準備を進める。奨励金は2000年と2001年の研修生の作品配給のための費用に使われた。
アルスター青少年オーケストラ(北アイルランド)
- 選考担当: エドワード・ヒース国際顧問
プロテスタントとカトリックの対立が激しい北アイルランドで、クラシック音楽を志す青少年に高水準の訓練の場を提供するため、1993年に発足。毎年、北アイルランドの青少年オーケストラの中から、14歳から21歳の若者をオーディションで選び、8月に10日間の集中トレーニングと2回のコンサートを開く。2001年、奨励金ではじめてのイギリス本土研修・コンサートツアーを行った。また、スコットランド・グラスゴーで行われた英国青少年オーケストラ・フェスティバルにも参加した。
キューバ国立芸術学校
- 選考担当: デイヴィッド・ロックフェラー・ジュニア国際顧問
音楽、造形美術(絵画、彫刻、保存修復)、舞台芸術(演劇・ダンス)、映像芸術(写真・映画・テレビ)の4学部からなる総合芸術学校。1976年創立。学生数約1000人。キューバ人建築家のリカルド・ポロによって建てられた校舎は、ラテン・アメリカ近代建築の中でも極めて重要な文化財とされる。ラテン・アメリカ諸国の芸術教育機関のなかでも最優秀といわれ、個性教育、キューバ民族文化の保持などに力を注いでいる。奨
励金は主に演劇・舞踊学科の活動のための照明、音響機器の購入に充てられた。
ポーランド国立映画テレビ演劇学校
- 選考担当: ヘルムート・シュミット国際顧問
「ポーランドの映画文化をつくろう」と、ポーランドの映画関係者が1948年に創設。政治的に芸術家に厳しかった時代にも、アンジェイ・ワイダ(1996年世界文化賞受賞者)やロマン・ポランスキーなど世界的な映画監督を送り出してきた。監督、カメラ、製作、俳優の4学科に250人が学ぶ。奨励金は学生による映画制作に充てられた。シナリオを学内で公募、ボスニアからの留学生の作品「雨のにおい」が選ばれ、1999年に映画化され、数々の映画祭で上映された。
ハノイ国立音楽院(ベトナム)
- 選考担当: 中曽根康弘国際顧問
1956年創設のベトナム最初の音楽専門学校で学生数は1000人。ベトナム戦争中も海外の奨励制度を利用して留学生を送り続け、若手音楽家の育成に努めた。奨励金は100人編成のオーケストラを誕生させる計画に対して贈られた。パリ在住の指揮者、矢崎彦太郎氏をハノイに招請、特別指導を受けた後、オーケストラは1998年、ハノイ、フエ、ホーチミンの3都市で巡回公演を行なった。公演ための団員の宿泊費、交通費、衣装なども奨励金で賄った。1999年には文部省の招待で来日、海外初公演を行なった。


