スティーヴン・ホール

Steven Holl

プロフィール

 日本、中国などアジアでも活躍する米国の世界的建築家。光や色彩による空間の「体験」と、その土地ごとの歴史や文化を融合させた作品は世界的に高い評価を受けている。米ワシントン州に生まれ、ワシントン大学に進学。1970年にローマに留学し、光と色彩によって自在に表情を変えるパンテオン神殿に魅せられた。その後、ロンドンAAスクール大学院に学び、76年、米ニューヨークで「スティーヴン・ホール・アーキテクツ」を設立。91年には磯崎新氏の招きで福岡市の集合住宅『ネクサスワールド・スティーヴン・ホール棟』を手掛け、初の海外進出を果たした。水彩画でコンセプトを固める。代表的な作品にヘルシンキの『キアズマ現代美術館』(1998)、『MITシモンズ・ホール(学生寮)』(2002)など。近年は北京の『リンクト・ハイブリッド』(2009)など、大規模な都市開発のプロジェクトも手掛けている。

詳しく

 空間を彩る光と色彩。足を踏み入れた時に得られる「体験」を大切にする建築は、欧米のみならず、日本、中国などアジアでも高く評価されてきた。それぞれの土地の気候や風土に加え、歴史や文化を踏まえた上で、そこに身を置く人たちの思考と感覚を刺激する空間を提供する。

  米ワシントン州ブレマートン生まれ。ワシントン大学に学んだ後、1970年、ローマに留学。このときの体験が後の活動に大きな影響を及ぼした。

  「毎日パンテオン神殿に足を運んで、光の移ろい、季節や天候による変化を調べた。訪れるたびに新たな発見がありました」と振り返る。2000年以上前に造られた神殿の丸い天窓から差し込む光と色の自在な変化は、「画家になりたかった」という青年の心を深くとらえた。

  「今も画家だと思っている」と、その感性は変わらず、毎朝2時間、小さなスケッチブックに描く水彩画には、インスピレーションとアイディアのすべてが詰まっている。日記も欠かさない。

  光と色が空間にもたらす効果を示す初期の傑作の一つがシアトル大学の『聖イグナティウス礼拝堂』(1997)。その後ヘルシンキの『キアズマ現代美術館』(ヘルシンキ、1998)、『マサチューセッツ工科大シモンズ・ホール(学生寮)』(2002)など、多くの賞を受賞した建築物を手掛けた。

  日本との関わりも深い。1945年8月から46年まで占領軍の一員として日本に滞在した父が持ち帰った着物や伝統工芸品に囲まれ、幼少時から日本に憧れた。特に京都の竜安寺が大好きという。

  磯崎新氏の招きで手掛けた福岡市の集合住宅『ネクサスワールド・スティーヴン・ホール棟』(1991)は初の海外進出となった作品。「わび・さび」をコンセプトに、ふすまや障子にアイディアを得て、ライフスタイルに合わせて自由に間取りを変えられる構造だ。また、千葉・幕張でも集合住宅を手掛けている。

  近年は経済発展の著しい中国で、大規模な都市開発を行うプロジェクトを手掛ける。北京の『リンクト・ハイブリッド』(2009)、深圳の『ホリゾンタル・スカイスクレイパー(ヴァンケ・センター)』(2009)など、光と色彩の体験に加え、環境にも配慮したモダンな空間は世界的な賞賛を浴びている。

  建築家として活躍するかたわら、現在もコロンビア大学で教鞭を執る。若者や音楽家など他の芸術家との交流も、新たなアイディアとエネルギーの源泉になっている。

略歴


1947 アメリカ・ワシントン州ブレマートン生まれ

1970 ワシントン大学卒業、ローマで建築を学ぶ

1976 ロンドンAAスクール大学院で学ぶ
ニューヨークにスティーヴン・ホール・アーキテクツを設立

1981 コロンビア大学で教鞭をとる(1989年教授)

1991 『ネクサスワールド・スティーヴン・ホール棟』(福岡)

1997 『聖イグナティウス礼拝堂』(ワシントン・シアトル大学)

1998 『キアズマ現代美術館』(ヘルシンキ)

1999 アメリカ建築家協会(AIA)建築賞(キアズマ現代美術館)

2000 アメリカ芸術文化アカデミー会員

2001 タイム誌で「アメリカの最高の建築家」と紹介

2003 AIA建築賞(MIT学生寮シモンズ・ホール 2002)

2006 北京事務所設立

2007 『ネルソン・アトキンス美術館』(米カンザスシティ)

2009 『リンクト・ハイブリッド』(北京)
『ホリゾンタル・スカイスクレーパー/ヴァンケ・センター』(深圳)

2012 AIAゴールドメダル

2013 『キャンベル・スポーツ・センター』(ニューヨーク)

2014 『グラスゴー美術学校リード・ビル』(スコットランド)