リッカルド・ムーティ

Riccardo Muti

プロフィール

 世界の音楽界をリードする指揮者。1967年の「グィード・カンテッリ国際指揮者コンクール」(ミラノ)での優勝で脚光を浴びた。ロンドンのフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者やフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を歴任。世界的な指揮者のアルトゥーロ・トスカニーニらが歴史的な名演を繰り広げた歌劇場「ミラノ・スカラ座」でも1986年から2005年まで音楽監督を務めた。レパートリーは古典から現代音楽まで多岐に渡るが、中でもイタリアの歌劇王、ヴェルディの作品への理解力には定評がある。2010年からシカゴ交響楽団の音楽監督として活躍中。イタリアと日本の文化交流促進に対する貢献が評価され、2016年に旭日重光章を受章。世界最高峰ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による「ニューイヤーコンサート」には2018年で5回目の登壇を果たした。2019年春から日本で若い音楽家のための「イタリア・オペラ・アカデミー」も開催する。
 ポートレート: © Todd Rosenberg
 Courtesy of RMMusic – www.riccardomutimusic.com

詳しく

 世界の音楽界をリードする指揮者。レパートリーは古典から現代音楽まで多岐に渡り、中でもイタリアの歌劇王、ヴェルディ作品への理解力には定評がある。作曲家が表現する世界観を最大限に引き出すのが特徴だ。
「作品には敬意を払っているので手を加えることなどできない。傑作にわれわれが口出しをするなんて許されることではありません」
 イタリアの港町、ナポリで生まれ、アドリア海に面したモルフェッタで幼少期を過ごした自身のことを「地中海の人間」と称する。「世界の中でも最も温和な環境に生まれ育った人間のことを表現しているのではないかと思う」
 ヴァイオリンやピアノを習得した後に、ミラノのジュゼッペ・ヴェルディ音楽院で作曲と指揮を学んだ。「オーケストラの前に立つときには多くの知識を身に付けてきたことが表れていると感じる」と自信をのぞかせる。
 脚光を浴びたのは、1967年のイタリアの「グィード・カンテッリ国際指揮者コンクール」での優勝だ。その後は「フィレンツェ五月音楽祭」の首席指揮者に任命された。オーストリアの指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤンに認められ、「ザルツブルク音楽祭」でもタクトを振った。
 その後は世界を舞台に活躍。英国のフィルハーモニア管弦楽団の首席指揮者や米国のフィラデルフィア管弦楽団の音楽監督を歴任。一方、イタリアでも手腕を発揮した。イタリアの指揮者、アルトゥーロ・トスカニーニらが歴史的名演を繰り広げてきた歌劇場「ミラノ・スカラ座」では1986年から2005年まで音楽監督を務めた。スカラ座での活動は、2004年12月、改修後に再開した劇場で上演、成功を収めた、作曲家、アントニオ・サリエリの歌劇『見出されたエウローパ』で最高潮に達した。
 2010年からはシカゴ交響楽団の音楽監督として活躍。同楽団とともに米音楽界最高の栄誉とされるグラミー賞にも輝いた。イタリアと日本の文化交流促進に対する貢献が評価され、2016年に旭日重光章を受章。世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の「ニューイヤーコンサート」では今年で5回目の登壇を果たした。
 若手の育成にも尽力し、来年春から日本で若い音楽家のための「イタリア・オペラ・アカデミー」を3年間の予定で開催する。「表面的な努力による成功では長続きはしない。自分の課題に真剣に取り組めば、より良い結果を生むと若者たちに伝えたい」。努力を惜しまない姿勢を次世代に継承しようとしている。

略歴

  1941 イタリア・ナポリ生まれ
  1957 サン・ピエトロ・ア・マイェッラ音楽院(ナポリ音楽院)でピアノを学ぶ
  1967 ジュゼッペ・ヴェルディ音楽院(ミラノ音楽院)で作曲と指揮の学位を取得
グィード・カンテッリ国際指揮者コンクール(ミラノ)で優勝
  1968-80 フィレンツェ五月音楽祭の首席指揮者
  1971 カラヤンに招聘され、ザルツブルク音楽祭でウィーン・フィルハーモニー管弦楽団デビュー
  1972-82 ロンドン、フィルハーモニア管弦楽団首席指揮者、1979年からは初代音楽監督
  1973 ヴェルディ『アイーダ』でウィーン国立歌劇場デビュー
  1975 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団と共に初来日
  1980-92 フィラデルフィア管弦楽団音楽監督
  1986-2005 スカラ座の音楽監督
  1990 カヴァリエーレ大十字勲章(イタリア)
  1992 ウィーン・フィル結成150周年記念コンサートで指揮、「金の指輪」を授与される
  1997 ラヴェンナ音楽祭のプロジェクト『友情の道』第一回コンサートをサラエボで開催
  2000 大英帝国勲章KBE、ウルフ賞(イスラエル)
  2004 若手育成のルイージ・ケルビーニ管弦楽団創立
  2010 ヴェルディ『アッティラ』でメトロポリタン歌劇場デビュー
シカゴ交響楽団音楽監督
レジオン・ドヌール勲章オフィシエ(フランス)
  2011 グラミー賞(最優秀クラシックアルバム賞、最優秀合唱パフォーマンス賞)
アストゥリアス皇太子賞
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団名誉会員
ローマ歌劇場終身名誉指揮者
  2012 大聖グレゴリウス勲章の最高位大十字勲章(イタリア)
  2015 リッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミー」初開催
  2016 旭日重光章
  2017 「イタリア・オペラ・アカデミー」の日本開催(2019−2021)を発表
  2018 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ニューイヤーコンサートで5回目の指揮