クシシュトフ・ペンデレツキ

Krzysztof Penderecki

プロフィール

  クシシュトフ・ペンデレツキは、1960年に発表した「広島の犠牲者に捧げる哀歌」で国際的な注目を集めた。腕などでピアノの鍵盤を押さえて不協和音を作り出すトーン・クラスター技法や、弦楽器を打楽器的に使用する前衛的な手法を駆使した音楽が特徴だったが、徐々に宗教的、伝統的な色合いを強め、65年に代表作である「ルカ伝による受難曲」を発表。他の代表作に「ヴァイオリン協奏曲」、オペラ「黒い仮面」、「アダージョ」など。作曲だけでなく、指揮者としても活躍しており、これまでにベルリン・フィルやニューヨーク・フィルなど著名なオーケストラを指揮。また、若手音楽家の育成にも力を注いでいる。

詳しく

  クシシュトフ・ペンデレツキは、1960年の「アナクラシス」や「広島の犠牲者に捧げる哀歌」で、腕などでピアノの鍵盤を押さえて不協和音を作り出すトーン・クラスター技法や、弦楽器を打楽器的に使用する前衛的な手法を大胆に用いて国際的な注目を集めた。
  「当時、私は電子音楽に出会って、大きな衝撃を受けた。トーン・クラスターは、楽器を使って、電子音楽の音を再構築しようと試行錯誤する中で生み出した手法だ。『広島』は単なる抽象音楽以上のものに仕上げることができたと思う」
  62年にはマラフスキ作曲コンクールの管弦楽部門で「カノン」が第1位を獲得。その後も実験的な曲を数多く手がけるが、65年ごろからは、自身のカトリック信仰に根差した宗教的、伝統的な色合いを強め、代表作である「ルカ伝による受難曲」を発表。16世紀の多声音楽と前衛的手法を巧みに融合させ、幅広い層から評価を得た。
  幼いときにユダヤ人迫害を目の当たりにした体験を持ち、アウシュヴィッツの犠牲者への追悼作「怒りの日」や、ポーランド民主化運動に関連した「ポーランド・レクイエム」などの作品もある。「芸術家はその時代のについて証言し、語る必要がある」と言う。
  彼の音楽には、印象的な合唱や不協和音によって、聴衆の緊張と不安をあおるような音響効果があるため、ホラー映画「エクソシスト」や「シャイニング」にも使用された。
  72年からは作曲だけでなく、指揮者としても活躍しており、ベルリン・フィルやニューヨーク・フィルなどを指揮、北ドイツ放送交響楽団の首席客演指揮者も務めた。「昔は作曲家は同時に指揮者だった。指揮をすることで、すべての楽器に精通することができ、正確な記譜ができる。作曲、演奏、指揮と、真の音楽家は何でもできなければならない」

  近年は後進の育成に力を注いでおり、2004年にはポーランドの若手音楽家のため、クラクフ郊外の別荘の近くに音楽センターを設立するなどの活動を行っている。

 

略歴

  1933  ポーランド・デンビツア に生まれる
  1958 クラクフ音楽院卒業。「ダビデの詩編」
  1959 「ストローフ」
  1960 「広島の犠牲者に捧げる哀歌」
  1962 「カノン」
  1966 「聖ルカ伝受難曲」
  1968 「怒りの日」
  1972-87  クラクフ音楽院院長に就任
  1973-78 エール大学教授に就任
  1983 ポーランド国家賞
  1984 「ポーランド・レクイエム」
  1988-92 ハンブルグの北ドイツ放送交響楽団で主席客演指揮者
  1997 モスクワ・チャイコフスキー音楽院名誉教授
  1998 北京音楽院名誉教授
  1999  日本フィルハーモニー交響楽団「ペンデレツキ・フェスティバル」で来日
  2003 太平洋音楽祭(PMF)のレジデント・コンポーザーとして来日
  2020 3月29日、クラクフの自宅にて逝去