内田 光子

Mitsuko Uchida

プロフィール

  日本生まれでロンドン在住の世界的ピアニスト。モーツァルト、シューベルト、シューマン、ベートーヴェンからシェーンベルク、ブーレーズまで幅広いレパートリーを持つ。特にモーツァルトに関しては「彼女ほどモーツァルトを弾きこなすピアニストはいない」といわれ、指揮も行う“弾き振り”も有名。1961年、12歳のときに外交官の父に同行してオーストリアに渡り、ウィーン音楽院でリヒャルト・ハウザーに師事。家族が引き揚げた後もウィーンにとどまり、数々の音楽コンクールで受賞を重ね、1972年、ロンドンに移住した。その演奏は、集中力と安定感、幅広い強弱の変化が特徴で、譜面を通して作曲家と心の“会話”を交わして得た独特の解釈を全身で表現する。マールボロ音楽祭芸術監督を務めるなど若手音楽家の育成にも尽力。今年11月には、サントリーホールで2年ぶりのリサイタルを開く。

詳しく

  天を貫くがごとき鮮烈な音、消え入りそうなはかない音…。日本生まれ、ロンドン在住の世界的ピアニストは、さまざまな音を恍惚の表情で、時に優雅に、時に激しく、指揮者がそうするように、全身を使って奏でる。

  「過去の、現在の作曲家が紙の上に書いたことを解読することが、私たち演奏音楽家の出発点です」。楽譜を通して作曲家たちと“会話を交わす”ことによって、彼らが曲に込めた思いや意味を読み解いていく。言葉にすると簡単だが、実際にそれをするのは難しい。「実のところ、何の手掛かりもないことが多く、『理解できた』ということは絶対にないのです」

  そんな中で、自分なりに見えてきたと思っているのが、モーツァルトとシューベルト。モーツァルトには、人間はどう動くのか、人間同士の関係、人間の奥に潜む心といった「人間世界」がある。シューベルトの場合は「だんだん消えていく魂」。そうしたものに、近づいていきたいという。「どの作曲家にも正直に向き合おう、と。ただそれだけです」

  1961年、12歳のときに外交官の父に同行してオーストリアに渡り、ウィーン音楽院でリヒャルト・ハウザーに師事。家族が引き揚げた後もウィーンにとどまり、数々の音楽コンクールで受賞を重ね、1972年、ロンドンに移住した。

  レパートリーは、モーツァルト、シューベルト、バッハ、ベートーヴェンなどドイツ・オーストリア圏の作曲家を中心にシェーンベルク、ブーレーズまでと幅広い。モーツァルトに関しては「彼女ほどモーツァルトを弾きこなすピアニストはいない」といわれ、ピアノを演奏しながらオーケストラを指揮する「弾き振り」も有名だ。

 「たった一つの旋律を奏でることさえ難しいのに、演奏しながら指揮するなんて、死にそうなほど難しい。とにかく、楽譜に何が書かれているか、その理解に尽きます。ただ、どうやれば目の前の音楽家たちに自分の思いを効率よく伝えることができるか学ぶことができ、これは楽しい」

  あくなき探究心とパワー。読み解きたい作曲家はまだまだ山ほどいる。そのエネルギーは「一途に音楽が好きで、他に関心がない」ことから生まれるという。「でも人生は短いのです。『あなたに何かあげる』と言われたら、私は『時間がほしい』と言います。もっと音楽を聴く時間、音楽について考える時間です」

  マールボロ音楽祭芸術監督を務めるなど若手音楽家の育成にも熱心に取り組んでいる。音楽的には日本人演奏家の粋を超えているが、今も和の心を大事にする。今年11月には、サントリーホールで2年ぶりのリサイタルを開く。

略歴

  1948 疎開先の静岡県熱海市で生まれる
  1961 渡欧。オーストリアのウィーン音楽院で学ぶ(1968年卒業)
  1963 ウィーンで初めてのリサイタルを開く
  1969 ベートーヴェン国際コンクールで第1位
  1970 ショパン国際ピアノコンクールで第2位
  1972 ウィーンからロンドンに移る
  1973 ルツェルン音楽祭でのクララ・ハスキル・コンクールで第2位
  1975 リーズ国際ピアノコンクールで第2位
  1982 ロンドンと東京でモーツァルト・ピアノソナタ全曲演奏を行う
(1991年ニューヨークで)
  1984 小澤 征爾の指揮するベルリン・フィル定期演奏会にデビュー
  1986-87 イギリス室内管弦楽団と弾き振りによるモーツァルト・ピアノ協奏曲全曲演奏会(東京)
  1986 芸術選奨文部大臣賞受賞
  1988 日本ゴールデン・ディスク大賞アルバム・オブ・ジ・イヤーを受賞
  2005 日本芸術院賞、文化功労者に選ばれる
  2009 大英帝国勲章デイムの称号を受ける
  2011 グラミー賞最優秀インストゥルメンタル・ソリスト演奏賞
  2012 ロイヤル・フィルハーモニック協会ゴールド・メダル受賞
  2014 ケンブリッジ大学より名誉学位
  2015 「ザルツブルク・モーツァルト週間」金賞受賞