Tadanori Yokoo
Tadanori Yokoo

横尾 忠則

Tadanori Yokoo

プロフィール

  1960年代からグラフィックデザイナーとして日本のポップシーンや前衛シーンを駆け抜け、その独自の画境は三島由紀夫、寺山修司らにも高く評価された。1980年代以降は「美術家」として絵画を主軸に創作を展開。1981年のいわゆる「画家宣言」後も、《滝》《Y字路》シリーズなど、夢と現(うつつ)、死と生を行き来する横尾芸術が進化。「死の側に立って、現実の生を見つめる」という視点に立ち、質量ともに圧倒的な作品を作り続ける。2012年には約3000点もの作品を収蔵する横尾忠則現代美術館(神戸市)が開館。2013年には豊島(香川県)に「豊島横尾館」もオープン。2014年にはパリのカルティエ現代美術財団に110点もの肖像画を出品した。作風やモチーフを変えながら、日本の大衆社会を随所に反映させ、旺盛な創作意欲はとどまるところを知らない。

詳しく

  1960年代からグラフィックデザイナーとして日本のポップシーンや前衛シーンを駆け抜け、1980年代以降は「美術家」として絵画を主軸に旺盛な創作活動を展開している。

  絵が得意で、絵本を夢中で模写する少年だったというから、既存のイメージを自在に操る作風の原点は、幼い日の「模写」にあるのだろう。1960年代後半、一連のポスターで独特のスタイルを確立。寺山修司、土方巽らアングラの旗手、三島由紀夫、大島渚ら文化人と共作を通して親交を深めた。

  前衛とポップ、前近代的な土着性を融合させた独自の画境は、“ヨコオ・ワールド”と言うべき世界だ。1972年にニューヨーク近代美術館(MoMA)で個展が開かれるなど、その評価は早くから海を越え、「日本のウォーホル」と称されることも。

  絵画も既に1960年代後半から発表していたが、ニューヨークでピカソ展(1980年)を見たことをきっかけに1981年、いわゆる「画家宣言」を出し、幼い頃から夢だった画家(美術家)に転身する。

  描く対象は森羅万象、夢と現(うつつ)を行き来する。地底・海底世界に冒険したり、ひたすら《滝》に没入したり。特に2000年から始まった《Y字路》シリーズは多様な想像と解釈を許す。絵画の枠に収まらない多才ぶりも発揮、1970年の大阪万博では建築も手掛ける。また、初の小説『ぶるうらんど』(2008年)で泉鏡花文学賞を受賞した。

 横尾芸術に通底するのは「死」だ。「生きている延長に死があるが、僕は死の側に立って、現実の生を眺める視点に立っている」と強調する。

  2012年には、絵画や版画、ポスターなど約3000点を収蔵する横尾忠則現代美術館(神戸市)がオープンした。開館式では「生前に美術館ができたのは死者になった気分。巨大なお墓を造っていただいて、どうぞ今後もお参りに来てください」と挨拶。現在は、近年の実験的絵画を集めた『続・Y字路』展が開かれている。

  そして2013年には、瀬戸内海に浮かぶ豊島(香川県)に「豊島横尾館」がオープン。「(自分の)お葬式場に」という福武總一郎さん(福武財団理事長)の依頼を受けて、横尾流の死のイメージを空間で表現している。あの世に通じる色の「赤」が、足を踏み入れた観客に鮮烈な印象を残す。

  世界で約120もの美術館が横尾作品を所蔵。昨年にはパリのカルティエ現代美術財団に110点の肖像画を出品、好評を得たほか、今後も国内外で多くの個展が予定されている。作風やモチーフを変えながら、日本の大衆社会を随所に反映させ、79歳の今も質量ともに圧倒的な作品を生み出し続けている。

略歴

  1936 兵庫県西脇市に生まれる
  1965 東京で初個展。三島由紀夫と出会う
  1969 第6回パリ青年ビエンナーレ展版画部門でグランプリ
  1970 大阪万国博覧会「せんい館」のパヴィリオンをデザイン
  1972 個展(ニューヨーク近代美術館)
  1973 個展(ハンブルク工芸美術館)(1982年にも開催)
  1974 個展(アムステルダム市立美術館)
  1976 ヴェネツィア・ビエンナーレ『アウテンティコ・マ・コントラファット』展に出品
  1981 「画家宣言」、絵画制作を活動の中心とする
  1984 モーリス・ベジャールの『ディオニソス』(ベルギー国立20世紀バレエ団、 ミラノ・スカラ座公演)舞台美術を担当
  1985 パリ・ビエンナーレに出品
サンパウロ・ビエンナーレに出品
  1989 バングラデシュ・アジア・アート・ビエンナーレで名誉賞
  1993 ヴェネツィア・ビエンナーレ『トランスアクションズ・ペドロ』展に出品
  1995 毎日芸術賞受賞
  2001 紫綬褒章受章
  2002 個展(東京都現代美術館/広島市現代美術館)
多摩美術大学大学院教授
  2003 個展(京都国立近代美術館)
  2006 個展(カルティエ現代美術財団、パリ)
  2008 個展(世田谷美術館/兵庫県立美術館)
初の小説『ぶるうらんど』が泉鏡花文学賞受賞
  2009 個展(金沢21世紀美術館)
  2010 個展(国立国際美術館、大阪)
  2011 ウフィツィ美術館(フィレンツェ)に自画像が所蔵され、紹介展示
旭日小綬章受章
朝日賞受賞
  2012 神戸に横尾忠則現代美術館が開館
  2013 香川県豊島に豊島横尾館が開館
  2014 『ポスト・ピカソ』展に出品(ピカソ美術館、バルセロナ)
カルティエ現代美術財団30周年記念『ヴィヴィッド・メモリーズ』展に110点の肖像画を依頼され出品
  2015 『インターナショナル・ポップ』展(ウォーカー・アート・センター、ミネアポリス/ダラス美術館/フィラデルフィア美術館)
『ザ・ワールド・ゴーズ・ポップ』展(テイトモダン、ロンドン)