授賞式写真

第26回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者 発表 / 18回若手芸術家奨励制度 発表

2014年 7月 16日

世界の優れた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞(公益財団法人 日本美術協会主催)の第26回受賞者が、7月16日(日本時間16日18時)、パリ、ローマ、ベルリン、ロンドン、ニューヨーク、そして東京の各都市で発表されました。

今年の受賞者には、詩人の心で多彩な表現技法を駆使し、絵画を中心に旺盛な制作活動を展開しているマルシャル・レイス、木材の中の年輪を見つめて木を削り、その原型ともいうべき姿を現出させる作品などで知られるジュゼッペ・ペノーネ、水彩画でコンセプトを固め、光や色彩による空間と、その土地の歴史、文化を融合させた建築のスティーヴン・ホール、「ティンティナブリ」(鈴鳴らし)様式という独特の作曲手法による作品で、現代音楽に独自の存在感を誇るアルヴォ・ペルト、「アパルトヘイト」(人種隔離政策)に抵抗した数々の戯曲で、人間の持つ弱さを描き出したアソル・フガードの各氏が選ばれました。

また、同時に発表される第18回若手芸術家奨励制度の対象団体には、ベナン共和国で現代アフリカ美術作品の展示、「美術教室」の開催などを通じてアフリカ文化芸術の振興に努めている「ジンスー財団」が選ばれました。

 

各部門受賞者は、下記の通りです。

 

第26回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者

■ 絵画部門    マルシャル・レイス (フランス)

■ 彫刻部門    ジュゼッペ・ペノーネ (イタリア)

■ 建築部門    スティーヴン・ホール(アメリカ)

■ 音楽部門    アルヴォ・ペルト (エストニア)

■ 演劇・映像部門 アソル・フガード (南アフリカ)

 

第17回 若手芸術家奨励制度 対象団体

■ ジンスー財団 (ベナン)

 

絵画部門 Painting

マルシャル・レイス Martial Raysse

1936年2月12日、フランス・ニース近郊ヴァロリス・ゴルフ=ジュアン生まれ

詩人の心を宿したマルチな造形芸術家。油彩画、フランスの歴史上の名画をネガ処理した平面作品、ブロンズ彫刻、ネオンサインを使った立体オブジェや映画、と多様な表現活動を行ってきた。1955年に最初の詩集を発表。2年後、ニースで開かれた現代作家展にモビールと詩を書いたオブジェを展示して注目され、翌年の個展では詩人ジャン・コクトーの絶賛を浴びた。1960年、大量生産品や廃棄物などを使って美術品を作る芸術運動「ヌーヴォー・レアリスム」の旗手として脚光を浴び、翌年にはニューヨークに進出。《メイド・イン・ジャパン》シリーズで高い評価を受けた。世界各国で個展を開催し、今年5月から9月までパリのポンピドゥー・センターで大回顧展を開催。今回が初の来日だが、清少納言、夏目漱石、永井荷風などを愛読する日本通でもある。

 

彫刻部門 Sculpture

ジュゼッペ・ペノーネ Giuseppe Penone

1947年4月3日、イタリア・ピエモンテ州ガレッシオ生まれ

自然との直接的な関係のなかから、様々な作品を生み出すアーティスト。豊富な種類の素材を使い、自然と自己の関わりを反映させた作品を作る。トリノのアルベルティーナ美術アカデミーで学び、1969年に初個展を開催。60年代後半にイタリアで起こった、自然にある石や木を使って作品をつくる美術運動「アルテ・ポーヴェラ」の旗手として注目された。木材の中の年輪を見つめて木を削り、その原型ともいうべき姿を現出させる作品は代表的なもの。自然の生命力を知的に表現してきた作品は高い評価を得ている。トリノ郊外の世界遺産ヴェナリア・レアーレ宮殿の彫刻庭園に14作品が設置されるなど、今やイタリアを代表する芸術家の一人。日本との関わりも深く、1997年と2009年に豊田市美術館で個展が開催された。

 

建築部門 Architecture

スティーブン・ホール Steven Holl

1947年12月9日、アメリカ・ワシントン州ブレマートン生まれ

日本、中国などアジアでも活躍する米国の世界的建築家。光や色彩による空間の「体験」と、その土地ごとの歴史や文化を融合させた作品は世界的に高い評価を受けている。米ワシントン州に生まれ、ワシントン大学に進学。1970年にローマに留学し、光と色彩によって自在に表情を変えるパンテオン神殿に魅せられた。その後、ロンドンAAスクール大学院に学び、76年、米ニューヨークで「スティーブン・ホール・アーキテクツ」を設立。91年には磯崎新氏の招きで福岡市の集合住宅『ネクサスワールド・スティーヴン・ホール棟』を手掛け、初の海外進出を果たした。水彩画でコンセプトを固める。代表的な作品にヘルシンキの『キアズマ現代美術館』(1998)、『MITシモンズ・ホール(学生寮)』(2002)など。近年は北京の『リンクト・ハイブリッド』(2009)など、大規模な都市開発のプロジェクトも手掛けている。

 

音楽部門 Music

アルヴォ・ペルト Arvo Pärt

1935年9月11日、エストニア・パイデ生まれ

独自の存在感を誇るエストニア生まれの作曲家。1963年に27歳でタリン音楽院(現エストニア音楽演劇アカデミー)を卒業。ソ連統治下、わずかに手に入る情報をもとに、現代音楽の技法を身につけた。1960年代後半から、グレゴリオ聖歌など中世の単旋聖歌、ルネサンス期の多声聖歌など「祈り」の音楽の探求に転じ、簡素な音の組み合わせを、まるで鈴の音が鳴り続けるように一定のリズムで繰り返す「ティンティナブリ」という技法を見つけ、1976年のピアノのための小品『アリーナのために』で独自のスタイルの確立を印象づけた。2010年にはエストニア各地で生誕75周年を記念するイベントが行われ、30年ぶりに祖国に帰国。首都タリン近郊に自筆の楽譜、各種資料などを保管する「アルヴォ・ペルト・センター」が設立された。エストニアから初の世界文化賞受賞。

 

演劇・映像部門 Theatre/Film

アソル・フガード Athol Fugard

1932年6月11日、南アフリカ・東ケープ州ミデルブルグ生まれ

俳優、演出家としても活躍し、南アフリカでは国民的な人気を博す劇作家。1932年、英国人の父とアフリカーナー(アフリカ南部のオランダ系移民)の母の間に生まれる。「英語で書くアフリカーナー」と称し、戯曲『血の絆』(1961)『マスター・ハロルド・アンド・ザ・ボーイズ』(1982)をはじめとするアパルトヘイト(人種隔離政策)に抵抗した作品で知られる。フガード作品に通底するのは、人間が持つ弱さや民衆の感情を描き出すことであり、その普遍的なメッセージによって世界各地で上演され、早くから国際的な評価を確立した。初の小説『ツォツィ』(1980)は映画化され、2006年に米アカデミー賞外国語映画賞を受賞。2011年にはそれまでの功績によりトニー賞を受賞。今年4月には米国初演の新作『ハチドリの影』で、15年ぶりに舞台に立った。岡倉天心、松尾芭蕉を愛読し、今回は61年ぶりの来日。アフリカ大陸から初の世界文化賞受賞。

 

第18回 若手芸術家奨励制度

2014 GRANT FOR YOUNG ARTISTS

 

選考: ピエール・ラファラン国際顧問 (フランス)

Selected by International Advisor, Pierre Raffarin(France)

ジンスー財団(ベナン)

The Zinsou Foundation (Benin)

アフリカ西海岸、ベナン共和国の名門、ジンスー家の出身、マリー=セシル・ジンスーさんが2005年、21歳の時にベナン最大の都市、コトヌーに設立したアフリカ文化芸術の振興財団。現代アフリカ美術作品の展示、「美術教室」の開催、文化芸術を通じての教育促進などの活動は、アフリカのみならず、欧州からも注目されている。子供を中心に、これまでに延べ460万人が参加し、全て無料。昨年11月、かつての"奴隷貿易"の町、ウィダにサハラ以南初の現代美術館を開館させた。古い2階建て邸宅を美術館に改修、現代アフリカ美術作品90点を常設展示している。ジンスーさんが2年前、香川県・直島を訪問した際、空き家を改修して美術作品を展示する「家プロジェクト」にヒントを得たという。ジンスーさんは1000点の現代アフリカ美術作品を所蔵しており、"直島方式"でさらに美術館を増設する計画だ。