杉本 博司

Hiroshi Sugimoto

プロフィール

  大判カメラを使い、「時間」や 「歴史」を想起させる洗練された作品を発表し続ける。東京に生まれ、米ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学ぶ。ジオラマ展 示を本物の風景のように撮影した《ジオラマ》や、米国内の古い映画館のスクリーンを映画一本分の露光時間でとらえた《劇場》など、明確なコンセプトと高い 技術に支えられた作品は、1970年代後半から国内外で高い評価を受けてきた。世界の海を同一構図で写した《海景》シリーズは、今春、ロックバンドU2の CDジャケットに使われ話題に。 作品は多岐にわたるが、絵画や彫刻に比べて歴史が浅い写真というメディアの可能性を追求 する姿勢は変わらない。文化財団の設立準備や評論の執筆など、活動の場は年々広がっている。

詳しく

  東京都台東区生まれ。中学時代から、名機「MAMIYA6」を操り、自宅の暗室で現像やプリント技術を磨いた。立教大卒業後に渡米し、ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学んだ。作品は1970年代後半から高い評価を集め、現在はニューヨークを拠点に活動している。
ニューヨークの自然史博物館のジオラマ展示を本物の風景のように撮影した≪ジオラマ≫、米国内の古い映画館のスクリーンを、映画一本分の露光時間で撮った≪劇場≫、20世紀の有名建築を無限遠の倍という焦点距離で写した≪建築≫など、代表作からは「時間」や「歴史」を視覚化する、という一貫したテーマが浮かび上がる。
その真骨頂は「古代人が見た風景は現代にも残っているのだろうか、という疑問から始まった」と言う≪海景≫だろう。世界各地の海を、水平線を中央に、白黒の階調の微妙な変化で表現した作品からは、時空を超えた普遍的なイメージが伝わってくる。今春、アイルランドのロックバンド、U2のCDジャケットに使われたことでも話題になった。
カメラを使わずに、暗室内で写真乾板へ直接放電する最新作≪放電場≫(2007-)は、反芸術を標榜したフランスの美術家、マルセル・デュシャンを信奉する杉本らしい着想の冴えと技術が光るシリーズだ。
「自分の命が古代に連綿とつながっている、という共同幻想のようなものを植え付けられるから」と古美術品を収集。香川県直島の護王神社再生プロジェクトを手掛けたほか、2009年10月下旬には、静岡県三島に自ら設計した写真美術館がオープンする。さらに、神奈川県小田原市で文化財団の設立準備を進めるなど、写真の枠を超えて活動の幅は広がっている。

 

略歴


1948 東京に生まれる

1970
立教大学卒業後渡米。
ロサンゼルスのアートセンター・カレッジ・オブ・デザインで写真を学ぶ。

1974
ニューヨークに移り写真制作を開始

1975- ≪ジオラマ≫(-1999)、≪劇場≫(-2001)シリーズを手がける

1977 東京にて初個展

1980-2002 ≪海景≫シリーズ

1989 毎日芸術賞

1994-1999 ≪恐怖の館≫シリーズ

1995 ≪仏の海≫シリーズ

1997-2002 ≪建築≫シリーズ

1998 ≪陰影礼賛≫シリーズ

1999 ≪肖像写真≫シリーズ

2001 ≪松林図≫
国際写真賞(ハッセルブラッド基金、スウェーデン)

2002 ≪護王神社-アプロプリエイト・プロポーション≫「直島・家プロジェクト」

2004 ≪観念の形≫シリーズ
≪影の色≫シリーズ(-05)

2007 ≪放電場≫シリーズ

2008-2009 『歴史の歴史』展(金沢、大阪)