第37回
2026年
彫刻部門
Andy Goldsworthy
アンディ・ゴールズワージー
略歴
1956年7月25日、イギリス・チェシャー(イングランド)生まれ
自然から得た素材を用い、作品が置かれる場の持つ特性を生かして制作する「ランド・アート」の第一人者。スコットランド南西部の村、ペンポントに住まいを構え、その豊かな自然の中で制作を続けてきた。「アートと自然は同じもの」という信念が、彼の人生の根幹をなしている。
少年期から青年期をヨークシャーで過ごし、ブラッドフォード美術学校に学ぶ。生計を立てるため同地の農場で働いた経験が、のちの制作の基盤となった。農作業は「多くの人手を要し、一定のリズムの中で行われる、非常に彫刻的な行為だった」と当時を振り返る。
これまで北極圏からタスマニアに至る世界各地で、採集した葉、枝、石、雪、さらに日光や雨などの気象条件や自身の身体も利用し、野外インスタレーションを展開してきた。「手にした葉や石が経た旅路をたどると、その場所への入口が見えてくる」と語るように、制作地の自然と対話することを重んじる。色づいた葉を川面に浮かべたり、枯れ枝を組み上げたりしてつくられる作品は、風景と調和し、繊細で詩的な美しさが宿るが、完成と同時に消えゆく儚いものだ。制作現場に残されたそれらを写真に収めたあとは、自然とともに朽ちるに任せるのが、彼の特徴的な制作スタイルである。
モニュメンタルなプロジェクトも手掛けている。ニューヨークのストーム・キング・アートセンターを約700mにわたって貫く石積みの壁、《ストーム・キング・ウォール》(1997-98年)はその代表だ。近年は、ヨークシャーの国立公園内の歴史的建造物を再建する《ハンギング・ストーンズ》に約10年をかけた。しかしこうした恒久的な作品も、後世に残す意図はないという。「変化を受け入れるものであり、それはある意味希望の行為」だと彼は語っている。
初来日は1987年。三重県の大内山村(現・大紀町)などに招かれて、その地に長期滞在して創作活動を行った。若手作家として苦しい時期だっただけに、「本当に特別な、美しい経験だった」という。日本での活動は『アンディ・ゴールズワージー展:ふたつの秋』(1993-94年、栃木県立美術館・世田谷美術館)に結実した。
その作品の数々は、スコットランド国立美術館やポリ・アート美術館(フィンランド)、メトロポリタン美術館、ソフィア王妃芸術センターなど各国の主要美術館での展覧会で紹介されてきた。2025年には、大規模回顧展『アンディ・ゴールズワージー| 50年』を、ロイヤル・スコティッシュ・アカデミーで開催。彼が現在取り組む《Gravestones》(墓石のプロジェクト)も一部紹介された。埋葬時に取り除かれる石を集めていく作品には、「人々は土地と深く結びついており、風景はあらゆる感情を含んでいる」という彼の自然観が息づいている。
2000年に、大英帝国勲章(OBE)を受章している。
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アンディ・ゴールズワージー《チェリー・パッチ》1984年
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アンディ・ゴールズワージー《凍った雪の一片》1984年
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アンディ・ゴールズワージー《ギブ・アンド・テイク・ウォール》1988年
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アンディ・ゴールズワージー《ストーム・キング・ウォール》1997-98年
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アンディ・ゴールズワージー《水で留められた楡の葉》2010年
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アンディ・ゴールズワージー《ヨブの井戸》2018年
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アンディ・ゴールズワージー《レッド・リバー・ロック》2016年
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アンディ・ゴールズワージー《樫の小径》2025年
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スコットランド南西部ダンフリースシャーのスタジオにて 2026年5月