第29回(2026年) ラ・スルス・ガルースト協会(フランス)
[ 選考担当 ] ジャン=ピエール・ラファラン国際顧問(フランス)
パリ 2026年4月
Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association
フランスの現代美術家ジェラール・ガルースト氏と、その妻でインテリア・デザイナーのエリザベート・ガルースト氏によって1991年に設立されたラ・スルス・ガルースト協会は、アートを通じた子供たちの支援と社会変革を目指して活動を続けている団体である。
創設者のジェラールさんは、「芸術のための芸術」という狭い枠に捉われた考え方を好まず、現代社会における芸術家には社会的・道徳的な責任があると語る。彼の活動の根底には、幼少期に叔母の家で、家庭環境に恵まれず公的支援を受けていた子供たちと共に過ごした原体験がある。芸術を通じて、うまく言語化できない子供たちの表面的な言葉から本当の願いを汲み取り、真摯な対話によって関係を築くことが最も重要だと彼は信じている。
協会設立のきっかけはノルマンディーの村での出来事だった。冬に暖房もなく窓が壊れた困窮家族の支援を役場から要請された際、村で何もすることがなく過ごす子供たちの姿を目にした。大都市のような文化活動の機会がない地方の子供たちのために何ができるかを考え、自身が芸術家の教える学校に通った経験をもとに、手探りで協会を立ち上げた。
活動の柱となるのは、第一線で活躍するプロのアーティストが講師を務めるワークショップである。対象となるのは、主に6歳から18歳までの繊細な時期の子供たち。学校の休暇中に平均20時間(月曜日から金曜日、1日4時間)行われ、金曜の午後には保護者を招いて成果を発表する場も設けられている。
提供されるプログラムは驚くほど多岐にわたり、デッサンや油彩、粘土細工といった伝統的な美術に留まらず、写真、映像制作、デジタル・イラストレーション、さらには演劇や執筆活動まで、現代芸術のあらゆる領域を網羅している。子供たちはプロのアーティストと同じ目線で作品作りに向き合い、この「本物との出会い」が子供たちの感受性を強く刺激し、日常では味わえない達成感をもたらす。
陶芸家・造形芸術家として彫刻を教えるマルゴ・タル氏は、子供たちが最初から失敗を恐れないよう「失敗もプロセスの一部。経験豊富な私でもたくさん失敗するから、やり直すことを怖がらないで」と言葉をかけ、他者との出会いや表現を伝えることの豊かさを子供たちに伝えている。
設立から30年余りが経ち、デジタル化をはじめとする組織運営の強化という課題に直面した際、二人の息子であるギヨーム・ガルースト氏が2024年に事務局長として参画した。ギヨームさんは、以前から協会の活動に関わり、文化イベントの企画などを手伝ってきた経験を活かし、若い世代の優秀な人材を呼び込んで組織を近代化させた。
現在、協会はフランス全土に10カ所の拠点を持ち、年間で約370件のプロジェクトを実施している。約200名のプロのアーティストが関わり、1万人近い子供たちを支えている。
経済的・社会的な困難に直面する子供たちが、創作を通じて自らの内に眠る創造性を発見し、自己肯定感を育む。ラ・スルス(泉)は、これからも子供たちが人生を自らの力で切り拓いていくための希望の扉であり続ける。

ラ・スルス・ガルースト協会創設者
Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association

フランス・オワーズ県 2026年4月
Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association

フランス・ヴァル=ドワーズ県 2026年4月
Photo: Shun Kambe © The Japan Art Association