授賞式写真

第19回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者 発表 / 第11回 若手芸術家奨励制度 発表

2007年 9月 20日

優れた芸術の世界的な創造者たちを顕彰する「高松宮殿下記念世界文化賞」(主催・財団法人日本美術協会=総裁・常陸宮殿下)の第19回受賞者が決まり、20日、常陸宮ご夫妻臨席によりパリの日本文化会館大ホールで発表されました。

第19回 高松宮殿下記念世界文化賞 受賞者
THE 2007 PRAEMIUM IMPERIALE RECIPIENTS

■絵画部門    ダニエル・ビュレン  (フランス)
■彫刻部門    トニー・クラッグ   (イギリス)
■建築部門    ジャック・ヘルツォークと
ピエール・ド・ムーロン (共にスイス)
■音楽部門    ダニエル・バレンボイム  (イスラエル)
■演劇・映像部門  エレン・スチュワート  (アメリカ)

第11回 若手芸術家奨励制度
■ウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ
(本部 スペイン・セビリア)

授賞式典は、日本美術協会 総裁の常陸宮殿下、同妃殿下ご出席のもと、10月16日(火)に東京・元赤坂の明治記念館で行われ、5部門の受賞者には、それぞれ顕彰メダルと感謝状、賞金1500万円が贈られます。若手芸術家奨励制度は、9月20日、パリでの受賞者発表の席上、奨励金500万円が贈られました。

絵画部門 Painting
ダニエル・ビュレン Daniel Buren
1938年3月25日、フランス・パリ生まれ

アトリエを飛び出して、作品が置かれる現場で制作する手法で、一貫してストライプを描き続け、美術界に新風を吹き込んできた。1960年代前半に活動を始め、65年から「視覚の道具」と自ら呼ぶストライプを作品に採用。その幅は8.7センチに統一されているが、カンバスに描いたり、布に染めたり、オブジェにしたりと表現の幅は年を追うごとに広がっている。69~70年には、パリや東京の地下鉄駅にストライプのポスターを無断で貼る芸術活動が話題に。86年には、パリのパレ・ロワイヤル中庭に設置されたストライプの円柱群「二つの台地」が注目された。同年、ヴェネチア・ビエンナーレにフランス代表として参加し、金獅子賞を受賞。「70年以来、200回近くも来日した」という日本でも、各種の作品展を成功させてきた。今も世界各地で新たな挑戦を続けている。


彫刻部門 Sculpture
トニー・クラッグ Tony Cragg
1949年4月9日、イギリス・リバプール生まれ

日常の道具、自然の物などを自在に使い、素材の形態や機能に着目しながら、人間と自然の関係をテーマにした作品を制作し続けている。英国の研究所に技術者として勤務していたが、アートに惹かれ、ロンドンの王立美術学校で学んだ。ドイツのヴッパータールに移住した1970年代後半から、プラスチックやガラス、合板などの素材を組み合わせて、人物や道具など新しい物体を連想させる作品を発表。ヴェネチア・ビエンナーレなど多くの国際展にも出品、彫刻に新たな意味を見いだす80年代の「ニュー・ブリティッシュ・スカルプチュア」をリードした。近年は鉄やブロンズなどの素材を使い、作品のメッセージも一段と多様化。現在、創作活動に加えて、「彫刻公園」造りを来春のオープン目指して、ヴッパータールの広大な林で進めている。


建築部門 Architecture
ジャック・ヘルツォーク Jacques Herzog 1950年4月19日
ピエール・ド・ムーロン Pierre de Meuron 1950年5月8日
共にスイス・バーゼル生まれ

スイス人建築家のチーム「ヘルツォーク&ド・ムーロン」は、建築物の素材と表層表現にこだわりながら、故郷バーゼルを拠点に世界各国で巨大プロジェクトを成功させている。幼なじみの2人は共にチューリヒ連邦工科大学で学び、1978年に建築事務所を共同開設。地元のリコラ社倉庫や信号施設「セントラル・シグナル・ボックス」などで高い評価を獲得。やがて2人の才能は国外へ飛び出し、ロンドンの発電所を改造した美術館「テート・モダン」、東京のプラダ・ブティック青山店など斬新な建築物を次々に完成させてきた。2001年にプリツカー賞を受賞。2人ともサッカー好きで、バーゼルのサッカー場やドイツ・ワールドカップ競技場「アリアンツ・アレーナ」も手掛け、来年開幕する北京五輪のメイン・スタジアムの鳥の巣のような鉄骨構造も注目の的だ。

音楽部門 Music
ダニエル・バレンボイム Daniel Barenboim
1942年11月15日、アルゼンチン・ブエノスアイレス生まれ

アルゼンチンで、ロシア出身のユダヤ系移民の家庭に生まれる。7歳でピアノ演奏会を開き、神童ぶりを発揮した。10歳でイスラエルに移住。フルトヴェングラーの影響を受け、マルケヴィチに指揮を習い、1962年には指揮者としてもデビュー。70年代からパリ管弦楽団、シカゴ交響楽団、ベルリン国立歌劇場で音楽監督などを歴任。バッハやベートーヴェン、ブラームスから現代音楽まで、ピアニストの勘と指揮者の技術を両輪とする精緻な音楽表現で評価を得た。ワーグナー解釈の第一人者でもあり、2001年にイスラエルで、反ユダヤ主義だとしてタブー視されていたワーグナーの曲を演奏した。パレスチナ系米国人学者の故エドワード・サイードと共に1999年に創設した「ウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ」の指導を通じ、中東和平への道も模索し続けている。


演劇・映像部門 Theatre/film
エレン・スチュワート Ellen Stewart
1919年11月7日、アメリカ・シカゴ生まれ

「実験的で前衛的な演劇を」と、ニューヨークのダウンタウンに「ラ・ママ実験劇場」を創設以来、半世紀近く、主宰者、プロデューサーとして多くの才能を発掘、世に送り出してきた。五番街の有名デパートで黒人初のエグゼクティブ・デザイナーとして働いて蓄えた貯金を基に、自前の劇場を確保した。人種差別の激しかった時代で、場所を転々としながらも舞台を守り続けた。「演劇にではなく、人に興味があった。今もそれは変わらない」と笑う。演劇を志す人への温かく確かな目は、ここから多くのスターや名舞台が生まれたことで証明されている。新人時代のロバート・デ・ニーロ、サム・シェパード、アンディ・ウォーホルらも支援を受け、1970年代に寺山修司や、東由多加率いる東京キッドブラザースが公演を行なった。最近は民話を題材にした演劇で活動の場を広げている。


第11回 若手芸術家奨励制度
2007 GRANT FOR YOUNG ARTISTS
ウェスト・イースタン・ディヴァン・オーケストラ
West-Eastern Divan Orchestra

選考:レイモン・バール国際顧問(フランス)
Selected by International Advisor, Raymond Barre (France)

1999年に、アルゼンチン生まれのイスラエル人ピアニスト兼指揮者、ダニエル・バレンボイムと、パレスチナ系米国人学者のエドワード・サイードが、イスラエルとアラブ諸国の人々の相互理解を深めるため、双方の若手音楽家を一緒に訓練するワークショップを始めた。これを基にオーケストラが結成され、2005年には、バレンボイムの指揮で、民族紛争の象徴ともいえるパレスチナ自治区ラマラで歴史的なコンサートを行なった。スペイン・セビリアにあるバレンボイム・サイード財団が運営を担当。参加資格年齢は14-28歳で、毎年、春のオーディションにパスすれば、夏期のワークショップでバレンボイムはじめ一流演奏家の指導を受け、その後、2ヶ月間、コンサートツアーを行なう。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団などプロの道に進む人も多数出ている。