ミハイル・バリシニコフ

Mikhail Baryshnikov

プロフィール

  抜群のリズム感とテクニックで高い評価を得たクラシック・バレエと現代バレエに加え、演劇、映画、テレビでも観客を魅了してきた。旧ソ連のバレエ団「キーロフ・バレエ」のトップダンサーに上り詰めたが、1974年、「さまざまなバレエのスタイルを勉強したい」と米国へ亡命。「アメリカン・バレエ・シアター」(ABT)に入団する一方、映画俳優にも挑戦し、『愛と喝采の日々』(1977)で、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。その後、ニューヨーク・シティ・バレエ団を経てABTの芸術監督に就任。1998年に坂東玉三郎との共演を実現させた。2005年にニューヨークに設立した「バリシニコフ・アーツ・センター」を拠点に、若手芸術家の育成にも尽力。最近は、一人芝居『ブロツキー/バリシニコフ』、『ある男への手紙』で賞賛を浴びた。今年4月、生まれ故郷のラトビアから市民権を贈られた。

詳しく

 舞台では、人懐っこそうな顔立ちと小柄な体からはとても想像できないほどの気迫を漂わせ、抜群のリズム感とテクニックで高い評価を得た。クラシック・バレエと現代バレエに加え、演劇、映画、テレビでも観客を魅了してきた。
 旧ソ連体制下のラトビアに生まれ育ち、父は厳格な軍人、母は仕立て屋の経理担当職員だった。舞台芸術に関心が高い母はバリシニコフをバレエ、オペラ、演劇によく連れて行き、気がつけば「いつか自分も舞台に立ちたい」と夢見ていた。
 16歳のとき、世界最高峰とされるクラシック・バレエ名門校「ワガノワ・バレエ・アカデミー」(レニングラード)に入学し、名教師、アレクサンドル・プーシキンの薫陶を受ける。「学校を卒業したら自分が自分の先生でなければならないし、若い舞踊家にとって最も厳しい批評家は自分自身であるべきだ」との教えは、その後の生き方を方向づけた。
 その後、旧ソ連随一の格式を誇るバレエ団「キーロフ・バレエ」(現マリインスキー・バレエ)のトップダンサーに上り詰める。ところが1974年、カナダで公演中の26歳のスターは、厳しい監視の目をすり抜けて冷戦下の米国へ亡命した。
 「クラシック・バレエのダンサーの寿命は長くても20年。芸術的情熱を充分に発揮できるところで働きたかった」
 米国ではニューヨークの名門「アメリカン・バレエ・シアター」(ABT)に入団する一方、映画俳優にも挑戦。プレイボーイの天才バレエダンサー役を軽やかに演じた『愛と喝采の日々』(1977)に出演し、アカデミー、ゴールデングローブ両賞で助演男優賞にノミネートされた。
 1960年代末から何回も来日、「能、歌舞伎を観て、翻訳された日本の本を読んで、私は成長した気がします」と語る。1998年に坂東玉三郎との共演も実現させた。
 2005年には「バリシニコフ・アーツ・センター」をニューヨークに設立し、若手芸術家の育成にも尽力している。
 最近では、一人芝居『ブロツキー/バリシニコフ』、『ある男への手紙』で賞賛を浴びた。69歳の今も、新しい芸術形態へのチャレンジを続けることについて、「自分に向いた題材だと100%の確信がなくとも、いつもトライしています。自分自身の恐怖に打ち勝ちたい。これが人生です」。
 今年4月、ラトビア政府から市民権を贈られた。昨年の音楽部門受賞者、ギドン・クレーメルとはラトビアでクラスメートだったという。

略歴

  1948 旧ソ連・ラトビア共和国リガに生まれる
  1957 バレエを習い始める
  1964 レニングラードのワガノワ・バレエ・アカデミーに入学、アレクサンドル・プーシキンに師事
  1966 ヴァルナ国際バレエ・コンクールのジュニア部門で優勝
  1967 ワガノワ・バレエ学校卒業、キーロフ劇場バレエ団に入団
  1969 『ヴェストリス』でモスクワ国際バレエ・コンクール金賞受賞
  1974 ソ連ダンサーのカナダ公演中に亡命
アメリカン・バレエ・シアター (ABT) にプリンシパルとして入団
  1977 映画『愛と喝采の日々』で、アカデミー助演男優賞にノミネート
  1978 ニューヨーク・シティ・バレエ団 に移籍
  1980 ABTにプリンシパル兼芸術監督として復帰(1989まで)
  1985 映画『ホワイトナイツ/白夜』
  1986 米国に帰化
  1987 映画『ダンサー』
  1990 ホワイト・オーク・ダンス・プロジェクト(バリシニコフ・ダンス財団)を共同設立
  1991 映画『ロシアン・ルーレット』でジーン・ハックマンと共演
  1998 坂東玉三郎と共演(東京)
  2000 米国芸術勲章
  2003 ブノワ賞(ロシア)
  2005 バリシニコフ・アーツ・センター設立(ニューヨーク)
  2014 映画『エージェント: ライアン』
  2016 一人芝居『ある男への手紙』(ロバート・ウィルソン演出)
一人芝居『ブロツキー/バリシニコフ』(アルヴィス・ヘルマニ演出)
  2017 ラトビア政府から市民権を贈られる