歌唱の巧みさ、演技力、感情表現力はテノール歌手のなかでも突出しており、「キング・オブ・オペラ」と称賛される。世界中で公演活動を続ける一方、指揮者としても活躍し、ロサンゼルス・オペラの総監督も務める。
サルスエラ歌手の両親と共に8歳の時にスペインからメキシコに移住。幼少期から両親の劇団の舞台に立った。メキシコシティの国立音楽院でピアノを学ぶが、声楽の才能を見出され、声楽家としての道を歩み始める。
イスラエルで活躍した後、ニューヨークシティオペラと契約、アメリカを本拠地にし、その後はウィーン国立歌劇場、メトロポリタン・オペラ、ミラノ・スカラ座など世界各地の舞台で名声を確立した。「サルスエラや両親のおかげで今日の私がある」と、今も感謝を忘れない。
1990年からは、ホセ・カレーラス、ルチアーノ・パバロッティとの三大テノールを結成、世界各地でコンサートを行い、オペラを一般の人にも身近な存在として認識させるとともに、ファン層の拡大にも大きく貢献した。
歌手としてのレパートリーは150を数え、他の追随を許さない。しかし、「私はまだ学生のような気分でいる。いつも楽譜を抱え、常に猛勉強しなければならないと思っている」と研鑽を怠らない。
今年7月に体調を崩して一時、入院したものの、「休めば、錆びる」がモットー。「ほとばしる情熱があるからこそ、何事もいとわないし、飛行機で移動することも苦にならない。熟睡でき、身体を休めることさえできれば歌える」と、72歳の今も、若々しい歌声を維持し、最近はバリトン役もこなす。
若手歌手の支援にも情熱を傾け、1993年に国際オペラコンクール「オペラリア」を創設。ここからアーウィン・シュロット、ロランド・ヴィラゾンら多くの名歌手を輩出している。
2011年4月、東日本大震災直後に来日公演を行った。唱歌『故郷』を日本語で歌い、大きな感銘を与えた。28年前のメキシコ大地震で、身内を亡くした悲しい体験があり、日本の被災者の心を少しでも癒したいとの思いで歌ったという。
今年は、仙台藩主の伊達政宗が家臣の支倉常長をスペインに派遣してから400年に当たる。「日本スペイン交流400周年」記念イベントが行われており、今回の来日は、スペイン側の「文化交流公式大使」としての役目もある。東京でのコンサートも10月12日と15日に行われる。